さいはての花園

夜空と銀の煌めきと

00 プロローグ

交わるはずのない運命が交わる場所で

星瞬く夜、二つの色が再び出会う――

 

 文字通り、満天の星たちが二人を迎えた。

 田に張られた水の鏡が、夜空をそっくりそのまま映し出している。はるか遠くに見える山までもが星の光で輝いているようだ。

 ひときわ目を引く天の川も、どこまでも裾野を広げてゆったりと流れている。

「来れて良かったな」

「……ああ」

 アキラは車椅子を平らな場所に固定したあと、車から機材を取り出してセッティングを始めた。

 全く興味も必要もなかった車の免許を取って、貯めてきたお金で車と――カメラを買って。ようやくふたりでここまで来ることができた。

「いい写真が撮れそうだ」

「これだけ天気が良ければな」

 シキは空を見上げたまま、感嘆のため息をもらした。彼にひざ掛けをかけてやってからアキラも隣に座った。

「描かないのか?」

「星は見るに限るからな」

「そうか」

 思えばシキがまだバイクに乗っていた頃、一緒に星を見た二回ともシキは筆をとらなかった。アキラも、自分の目で見るのが一番というのは賛成だった。この星空は何かで表現するにはあまりにも壮大だ。それでも誰かに伝えたい、という想いがあった。

「俺が写真を撮って、他の誰かに伝えるよ」

「おまえの馴染みにでも、送ってやるといい」

 シキがケイスケのことを覚えていたのは意外だった。だがたしかにそれはいい考えだ。

「そうだな」

 いつだってアキラに寄り添ってくれた。どうしようもなかった自分にまともな仕事を紹介し、共に暮らし、新しい人生を祝ってくれた。そんな彼にこの素晴らしい景色を伝えたくて、アキラはシャッターを切った。

 何度も、何度も。

 ふたりで見上げた星空を忘れぬように、強く強く刻みつけるように。